独り宿る 雨夜の月は 水に映らずとも 目蓋に浮かぶ 乾く地(つち)が 涙に潤ふ 月に日に異(け)に 咲き 散り敷く花よ 幽(かそ)けき世は 夢幻 何(いず)れ消ゆる 燈し火 名前も判らぬ 天飛ぶ鳥よ 私の代わりに 唯 鳴いて呉れ 青み渡る 御空の気色(けしき) 眇(すが)む草葉の露 果敢なき定め 幽(かそ)けき世は 夢幻 生ひては老ゆ 無常に 名前も判らぬ 天飛ぶ鳥よ 私の代わりに 唯 鳴いて呉れ 生まれて滅せぬ者のあるべきか 一度(ひとたび)命を燃やしたなら 誰も常(とこ)しへの身は持たず 誰も誰も同じ骨へと帰る 名前も判らぬ 天飛ぶ鳥よ 私の代わりに 唯 鳴いて呉れ 歴史を語らぬ 自由な鳥よ 私の無き世に 唯 鳴いて呉れ さあ 飛んで行け