彩りの中で笑う君の 帰りを待つ…… 季節も呼べない部屋に 転がる 細い絵筆 飾られた肖像を 白い檻が閉ざす 欠けた箱庭を埋める色を 探し求めて 仮染めの森に咲く 遠い影を見る 芽吹いた 花の輪郭 空にほどけた 風の螺旋 もう一度 もう一度 触れたくて 描くことで また逢えるならば 私は筆を取ろう 咲き乱れた花輪(くさり)を 揺らしながら 君は歌う あの頃のように…… 翼が大地を擦(なぞ)り 次の種が目覚めて 偽りの草原は 優しく靡いた 重ね合わせた 手と手に 留めた色は 強く 淡く もう一度 もう一度 ここへ来て 薄れゆく君を 癒すように 滲むほどに染めても 懐かしい木漏れ日を 抱きながら 顔を伏せる…… 彩りの中で笑う君が 白い翼(はね)を描いた 消えてゆく花びらを 箱につめて どこまでも どこまでも 遠い空へ 私の居ない空へ 永久に 染められてしまう前に 握りしめた 乾いた絵筆を……