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路上

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64
  • 2002.05.22
  • 13:34
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歌詞

俺に憑りついてるっていう カルマによると 俺は人違いで死ぬらしい 冗談じゃねえ。 そのご指名自体が人違いだぜ 俺がまだずっと ガキの頃に聞いた話だ 俺の曾祖父さん いつも通らない道を歩いてて 崖崩れに待ち伏せされて死んだ あれは人違いみたいなもんだって 近所の爺さんがよく話してた 俺のおじさんは一字違いで マオイストの活動家ってことで 引っ張られ もう8年連絡がない 今は言わなくなったけど 親父は俺が外に出ようとすると よくこう言ってた 「決して目立つな。 カルマにはくれぐれも見つかるな。 人違いされるな、 いいな、決して目立つな。 爺さんと兄貴は お前と同じ長男だったんだ」 靴ひもを踏んづけて 前のめりになりながら 俺は表通りに出ていったんだ 情けなくも無情に 今日も日が暮れてく 西風に乗って寒さが運ばれてくる カーテンをめくる 東に闇がゆっくりと夕焼けを削る 昼が眠る 輪郭や顔色があいまいな 人目に付かない商売が有利な世界だ 真っ黒い鳥たちが泣き出す 快感と金が騒ぎ出す朝の始まりだ 金貸しを回って疲れ果てたおやじが 離れない影を引きずるのを 屋上から見た 運に恵まれなかった敗者 生きてるだけマシだって 慰めには俺はもう飽きた 不公平への涙は まだガキだったころに乾いた 必死に抜け道を探した すきま風と暮らす生活はまっぴら 相棒のラムとスキーの一派に入った スキーは俺と同い年の18で すでに若くして この通りに立ちはじめ 元締めの娘をたぶらかして 今や4つの交差点の 取引を支配してて 用心深く ずるがしこい狐 元締めに忠実で 陰で呼び捨て ボディーガードを引き連れ 「人生の勝負時が来たら まったなしだ」が口癖 俺はタイパウダーと ブラウンシュガーを扱う この時期のカトマンズは 好き者が集まる ドルや円をたくさん持ったお客さん あんたは特別だから 他の奴からは買うな 相棒のラムは信用できる奴だ 俺がこの街に 引っ越してきた夜に出会った 奴のシャツは 誕生日に俺がやったやつだ 俺のナイフは奴からもらったやつだ 薄っぺらい壁で貧しさを挟んだ 薄暗いアパートの廊下で 一緒に育った 1本の光がひび割れたガラスから それを見てよくラムは言った 「カルマに勝つんだ」 路上は回転する劇場だ まるで同じ人間の繰り返しの映像だ うまい話を探し右に左に男が 同じ顔で きょろきょろうろつく旅行者 クラクションやスモッグや 落伍者や売り言葉 気づかれずに逃げる毎日の足音が 似たような時間 似たような速さで いろんなしがらみに絡まって のどからからで通り過ぎてく そびえるレンガの牢獄 狭い空を呪われた地上からのぞく 現実に戻す 野良犬の声が届く 「ひょっとしてお前 逃げ出したくなったのか?」 昨日の日本人は 久しぶりのお人好しだ シュガー2000/gで喜んでうなずいた 5gで1万、 スキーに渡すのが1000×5gで5000 残り5000 スキーに借りた金が1000 次の仕入れ分が500×4で2000 残った2000ルピーそこそこが 俺の儲け とうていわりに合わねえこの5年 何万回ここを往復したと思ってる どれだけ 有害な空気を吸ったと思ってる どぶネズミは俺を家族だと思ってる もう地球はここだけとすら思ってる 「道は1つだけ残ってる」 ラムは思いつめた顔を崩さずに 計画を話し続けた 今日も路上を抜ける風は冷たい 「スキーの金庫の金を盗めば」 路上には今日も同業者や客引きや 駆け引きや乞食や体重計り屋 楽器売りやガキやリッチな外人や 詐欺師や海賊品がひっきりなしだ つばやほこりや ゴミが積もったアスファルトは じっと雨を待ってるかのようだ この辺で足を洗おうと思ってた男が 最後の仕事で パクられるのを見たことがある 「スキーの野郎は 明日からポカラに旅行だ ボディーガードも一緒だ 留守は奴の女 盗み出したらまっすぐに国境だ 明日の今ごろはインドに密入国だ いいな、明日だぞ」 「明日?」 「そう明日だ」 「第一その情報は確かか」 「間違いない」 笑いながらスキーを真似て ラムは言った 「人生の勝負時が来たら まったなしだ」 巨大な車輪が俺の迷いを乗せて 回りだした かすかに不吉な予感がした だが事実、 チャンスは向こうから来た 俺は残ったパウダーを 全て安くさばいた 寒さに間借りしてるような 部屋に戻った ここは8才でガンジャを吸う弟や 親父に殴られ 蹴飛ばされたおふくろが 1枚の毛布で眠るこの世の底だ 「神様は等しく俺にも命をくれたが それだけで それ以外何もしてはくれない ついに俺は究極の答えを見つけた」 親父が叫び壁に向かって狂ってた 「世界はゲットーだ 絶望のベットだ 出口が入り口につながっている 迷路だ 見えないカルマに殺される戦場だ 地図や歴史にも載らない捨て猫だ 路上 最後のシャッターが閉まる音 娼婦がレストランの窓を覗き込む 客にもらった 治らない風邪にせきこむ ごほっ ごほっと重く 路上 スキーを乗せたロイヤルネパールが 西に飛んでった 空港から奴の女を送り届けた ルームミラー越し 愛想笑ってる俺は 思わずネックレスや指輪に 目を細めた 路上で儲けた3階建ての豪邸は 今日もバラ色の あったかさが灯ってた 俺はいつものように 部屋に上がり込んでた 忠実な犬が裏切るとは 誰も思ってない 金はベッドルームの金庫にある ドルキャッシュ スキーが吸う分のクリスタル 暗証番号は のん気にチャラスを吸ってやがる 目の前の女の誕生日の逆 帰り際にドアの鍵はいただいた 「またすぐくるからよ」と 小さくつぶやいた 街には夕闇が居座りだしたが 俺の道だけは 全く狭くも暗くもなしだ 残ったマッシュルームを 全て金に替えた ラムといつもの角に待ち合わせた ネパール最後の夜 冷たい冬の雨が 路上から全ての生き物を追い立てた 飯はそれぞれの家へ帰って食べた やせたおふくろが 冷めたダルと待ってた 今の苦しみは前世の罪のためだ そして来世のためだ そう目は語ってた 路上 あきらめきれない表情 笑わない妹 落ちない泥 弱者で満載の水が漏るボート 空腹の象徴 路上 希望の扉をラムが開けてく スキーの女は 1階のラウンジで寝てる 2階へあがり ベッドルームの壁に埋めてる 金庫の前まで一気に息を止めてく ダイヤルをラムが4回回す間 今 神が俺達を選んでると感じた 最後の沈黙の後 遂に金庫は開いた 突然「なんだこの光は」 ふりかえるとスキーの女がいた 女が声を出す そして俺はナイフを出す 3秒女は悲鳴をまき散らした 俺は左手で顔を押さえて 喉元を刺した 我に返るまで5分を費やした この部屋で生きてるのは 俺とラムの二人だ 血まみれのシャツを捨てて スキーのジャケットを借りた スキーのジャガーで アップタウンを抜け出した インド国境が近い ビールガンジ目指し 一路南 栄光のゴールは近い ラムは言った 「最後にあの通りを見たい」 俺も同じことを思ってたと ハンドルを左に 霧を吸って嘆きをはく路上 両脇に一生閉じこめられた捕虜 俺は確かに聞いたんだ 誰かの寝言を 「頼むから 俺も連れてってくれよ」と 助手席のラムは 振り返っていつまでも見てた 「ラム 俺達はこれからの人間だ」 いつの間にか カトマンズは遠くに見えた カルマは遂に振り切ったかにみえた 遂に 遂に 振り切ったかにみえても カルマ特別委員会は追いかけてくる 逃げたって隠れたって無駄だな 太陽と月だって奴らの味方だ 遂に 遂に 振り切ったかにみえても カルマ特別委員会は追いかけてくる 逃げたって隠れたって無駄だな 太陽と月だって奴らの味方だ ビムフェディ近くのケチな検問 警官の一人がジャガーと ジャケットを見つめると いきなりこう言った 「おまえ スキーじゃねえか? 知ってるぞ おい、こいつ タメルのスキーだ あの ヘロインの... このジャガー...間違いない」 「正義ってもんを 見せてやる」 俺は人違いで死ぬらしい・・・ 「おい! そこを動くな!」 「待て!車から降りろ!」 「逃げられると思うなよ」 「動くな!」 「撃つな もう撃つな」

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