どこへ行くとも 言わないで 夜明けあの人 舟の上 雨のデッキに眼をこらしても 溢(あふ)れる泪(なみだ)で 何にも見えない― わけをきかせて下さいと 叫ぶこの声銅鑼(どら)が消す 行かないで 行かないで 行かないで― 寒さ間近の 波しぶき 夜明け桟橋 雨しぶき こんな時間に出て行く船に あの人希望をかけたのだろうか― だけど私はどうするの 何もおしえず行くなんて 行かないで 行かないで 行かないで― ぼくの故郷は 君の胸 いつもあの人 言っていた いつか夜明けに帰って来ると 一言きければこんなに泣かない― 私いつまで待ちますと 船につたえる束(つか)の間(ま)を 行かないで 行かないで 行かないで―