切り詰めた分だけ幸福は戻ってくる 駅から延びるバス通りを冷えた足で 歩き帰る 雨に町が沈めど為す術なく 憂いている 乾いても尚放ったまま香る記憶 どうしたらいい 道を失う者たちが 死者の背中をなぞる 溢れて軋んで 虹の橋を渡って行く 梅雨過ぎて八月 髪靡いて九月 私はただ綺麗なまま木の葉落ちるを 眺めている 西を向く富岳が桃色に変わる頃 影が先を歩くから それに黙って続くだけ 切り詰めた分だけ幸福は戻ってくる 自分じゃなくても誰かの手に届くと 信じてる 叶いもしないことの方が 鮮やかなるのは何故 会いたい 会えない この気持ちを塞いでいる 綴り刺せ十月 乾いた空に息を吐く 私はまだ私だけを救うための歌を 書いている 私はまだ私だけを救うための歌を 書いている