騒がしい風が吹く 表の通りには人影もなくて 器の縁からは湯気が上り 朝の光で染められて消える 嘘みたいな時間が 頭の上を流れているんだ 何もない 素晴らしく何もない ここから遠くへ 帰る飛行機は白い 雲を吐き出して 消えてしまう 寒冷前線を飛び越え 街中の大きな窓に 無くなったはずの黒い旗が揺れる 街路樹の隙間から煙が上がり 朝の光で染められて消えた 嘘みたいな時間が 扉を蹴って流れて来るんだ 何もない 消え去って何もない ここから遠くへ 帰る飛行機は夢の かけらだけ残し 消えてしまう 寒冷前線を飛び越え 何も無い 突然に何もない 僕らを残して 帰る飛行機は黒い 砂を巻き上げて 消えてしまう 寒冷前線を飛び越え ひび割れたいつもの朝 錆びついた車が暗闇を連れて 急須の蓋は音を鳴らし 床に飛び散り砕けて消えた