薬のにおいがはなをついて部屋を出た 晴れた五月の木曜日 今日の明け方 並びの部屋で誰かが 静かに旅立ったらしい “また、来る…”とだけ言い残した 臆病なぼくをゆるしてほしい あなたがもう言葉にしなくても ぼくにはわかるから… 続いてゆく全てのことが 永遠じゃないこと その日はねむった おもくよじれた体を やみの中に横たえた 遠くの森が風に大きくゆらいだ “明日の朝にはやむのかな…” 数えきれない未来と 数え足りない思い出と 何か伝え忘れたことは ぼくにはもうないけど… あと少しだけ話ができるなら 何を話すのだろう