<白い寫眞館> あの街には まだあるのだろうか 白いペンキのちいさな寫眞館 窓には女学生の寫眞がひとつ 額に飾ってあった その黒髪はかすかにゆれ うすむらさきの日暮れに溶けた そのほほえみをみつめた時 わが眼差しは炎と燃えた それがあいつの恋人だとは その時少しも気づかなかった あの街には まだあるのだろうか 白い花咲く垣根の寫眞館 神社の祭の夜あいつは言った 合わせる人がいると 暗い境内 鳥居のわき なぜかそこだけ明るく見えた そのほほえみをみつめた時 わがおどろきは冷たく覚めた それが寫眞のあの人であり 間もなくふたりは婚約をした わがふるさとははるかな街 わが初恋は美しいまま 額の寫眞を見ないでいたら まだあの街に居たのだろうか