月今宵 松にかへたる やどりかな 路辺の 刈藻花さく 宵の雨 菜の花の 色にも染めず 蝶の夢 草臥れて 宿借るころや 藤の花 後の月 賢き人を とふ夜かな 瀟湘の 雁の涙や 朧月 うすぎぬに 君が朧や 峨眉の月 磯千鳥 足をぬらして 遊びけり 若葉して 水白く麦 黄ばみたり 桜なき もろこしかけて けふの月 遅き日の つもりて遠き 昔かな 名月や うさぎのわたる 諏訪の海 十六夜の 落るところや 須磨の波 岡の家の 海より明けて 野分かな 山鳥の 枝踏みかゆる 夜長かな 旅人よ 笠嶋かたれ 雨の月 女郎花 二もとおれぬ 今朝の秋 春靄や あなうぐひすよ むかし声 屋根ふきの 落葉を踏や 閨の上 十月の 今宵は時雨れ 後の月 花に来て 花にいねぶる いとまかな 立雁の あしもとよりぞ 春の水 いづちより いづちともなき 苔清水 椎の花 人もすさめぬ にほひかな 旅人の心 にも似よ 椎の花 花の香や 嵯峨のともし火 消る時 葛水や 鏡に息の かかる時 明けやすき 夜をかくしてや 東山 雲呑んで 花を吐くなる よしの山 梨の園に 人を佇め 宵の月