頬にあたる1つの滴 引き返そうか少し悩む 忘れ物をしてきた僕を せせら笑った5月の雨 踏み込むペダルが重くなってゆく 自転車を漕ぐ坂道のぼる立ち漕ぎ 染み付いたクセ このまま忘れたものを 忘れたまんまで 生きていけるとして 受け入れるのが大人と呼ぶのならば 僕は何者になるんだろう ああ、まだ止まない雨の中 火照る顔に湿気る前髪 肌に張り付くTシャツも 向かい風が時折吹けば 少しずつでも乾くだろう 思い出の中は心地良かったかい? 生温さが身に染みて ふやけた指じゃもう掴めない くやしいくらいにあの頃の 透き通った瞳が写すこの世界は 想像よりもずっと近く 手を伸ばせば届く 濡れたって構わない 忘れかけたあの気持ちを 仕舞い込んだ机の中 そっと開けば 思い出す変わらない自分を 受け止めて 光が雨雲の隙間からこぼれる 優しい雨に包まれて 見つけたんだ 僕のはじまりの記憶 夏が来る前の 雨の匂い