澄み切った空に届く山々 桜の花びら降る庭 一度さよならしたふるさとで もう日誌は十五冊 おぼつかぬことも増えるなか 巡りゆく季節は 儚く 短く まだ動く腕に託して 明日を耕せば 輝く 羽ばたく 今年もまた夏がやってくる 次第に息詰まる夏が 沢にわずかに残る蛍は いつまで見られるだろう 私を超えていくあの子らを 画面越しに見守る日々 願わくば溺れないようにと 神か鬼かの裁き 万緑にすれば違わず 蛍もヒトさえも 儚く 短く 夏ごとに皆で撮る写真 いつまでも胸に 輝く 羽ばたく 今年もまた夏がやってくる 目眩に身の軋む夏が 最期に光遺す蛍の ように生きていきたい