夕暮れのニュータウンをぬけて 列車がホームから各駅で出ていった つゆあけのまえの校庭に まばらな制服が ここから小さく見える きみを失った改札が もうじき右にくる 踏切の音がきこえる あれほど毎日きみだけを 思って暮らしてた 町が少しも変わらない これから何処へ行こうか どこかでおびえるスパイのように 人波やビルに流されて 無造作に夢さえもなくしてた りんどうが看板にゆれる ドアがあくときみが そこに立っている気がする 重ねたカバンとカーディガンと 人にもまれながら 笑ったきみがそこにいる これから何処へ行こうか 暗号が解けないスパイのように 眠れない夜が過ぎてゆく しばらくはこのままでここにいる 泣きだしそうなはげしさできみは 埋もれそうなもどかしさできみは はみだしたぼくの気持ちを 救ってくれた 抱きしめるあたたかさだけが 胸を刺すようなぬくもりだけが 少しくらいあれば 生きてゆけるのに これから何処へ行こうか どこかでおびえるスパイのように これから誰を愛そうと この場所も横顔も忘れない これから何処へ行こうか 暗号が解けないスパイのように 町の灯が全て消えても しばらくはこのままでここにいる