深度、段違いに潜りきった 地図にない底に コーデュロイの海月、 無色透明の寄生魚 気体バルーン纏った潜水艦、進め サーチライト照らせ照らせ 岩窟の深奥層 昼も夜も鉄の中の闇夜 パイプ管の振動 唯一の手記だけを頼りに沈もう 使い古された合図なんて必要ない 重油の匂いに塗れ降下を乱すな 水圧も静寂も目下アンダーゴウ さあ文明に隠された真実論争 眼前の浩々たる海底都市を・・・ そこに愛はあった?誓いはあった? どこかで報われた? 日照りも、夜空も、生命も、 吸い取られた歴史の傷跡 明日があって、家庭があって、 未来に包まれて もうそんな音もすっかり止んだ 水で満ちても、深い水底で虹は 架からないの 栄光の対価 禁制文明 落下 行き過ぎた動力源の濫用 暴走脱法 幻想の買い手 権力者逃げ去って 黒い魂は空白に成り済ました 幸せそうなネガフィルムの目 指輪と髪飾り 安息の地 終幕を綴ったタイプライター 鳴らなくなった枯淡の鐘 蒙昧な生活も紺碧に染まった 潜望鏡で見やった生態の退化 人は何処へ行ってしまったのだろう 「帰りを待ったどんな言葉も 母も子も夢も、愛の蜃気楼 明日を見せてと祈りました」 朽ちた木の壁に彫り刻まれた 諦めきれない最後の叫び 「向こうで先に待っています」 でも命はあった 崩れた街は眩しく包まれた 瓦礫や緑の家から 夜光虫たちが溢れて弾けた 儚く散った 麗らかだった すべてを確かめた 想像を超えた、時代を超えた 幾万里深い底に残された想いは 仄かな声を上げた そして、また、長く眠ってしまう 栄光の対価 禁制文明 落下 行き過ぎた動力源の濫用 暴走脱法 幻想の買い手 権力者逃げ去って 黒い魂は空白に成り済ました 海面に帰った潜水艦は嘆いた 消された文明は確かにそこに在った 始まりのようで終わるような海だ そして誰からも 愛されなくなった街だ