扉の前に セミが死んでいたの 空っぽのからだは とても軽かったよ セミが泣きやむと 空も息をとめた その静けさの中、 おどる陽炎に触るの 忘れるんだろう 鳴らしたこの響きも 忘れるんだろう ただれたこの体音も 混ざらない血の赤で マッチをすって 空を焼く セミもうたも抱いて オレンジの帰り道 夏がひとり ブランコこいでる 今日はとべる 今日をとべるんだ あの坂の向こう 海がある気がするの 潮騒のコバルト タ焼け色に溶けていけ 忘れるんだろう ふるえる この6弦を 忘れていいんだよ 今だけみつめていて 流れ星 おいかけて死んだ男が みていた風景は誰にも描けない 記憶には残さない 思い出はただの死体さ 今がすべてさ 今日がすべてさ