桜木の下の 特等席 草の香りと ささやく風と わたしだけが知る ひみつの場所 本を読んだり ぼんやりしたり 草のざわめきが来客を告げた 大きな楽器抱えた少年 ぎゅっと心を掴まれたみたいに わたしの 秘密は 砕けた 風にとける やさしいテノール あげは蝶が運ぶ 奏でられた チェロの音が 空にとんでいく 空にとんでいく 泣き出しそうな 彼の笑顔 まぶたの裏 焼いて 夜が来ても 朝になっても ずっとはなれない 鳥籠に閉じこめてた めずらしいあげは蝶を ひとときも目をはなさず 掴まえてたはずなのに はらり 木枯らしかけ抜けて ひとり 冬が来たと知って 蝶は てのひらから零れて、堕ちてた 本の中の恋の話 そんな偽物じゃない 風にとける やさしいテノール あげは蝶と消えた 消えたはずの チェロの音が ずっとはなれない ずっとはなれない