あいつの名前は誰もわからない 月に照らされた男の口ひげ つぶらな瞳に髪がかかりそうで 細く哀しげな声で鳴いた いつしか男は街で一番の きれいな娘のハートをつかんだ ささやかに祝う 冷たい鼻と鼻で 確かめ合うのさ 言葉もなく 薔薇色の日々は まぶしく過ぎゆく 腹は減るけれど ふたり一緒なら トタン屋根の上 小さな幸せを ただ身を寄せ合い あたためて 明日も晴れますように おやすみ おやすみ 雨上がりの空 見上げて目を細め からだいっぱいに陽をあつめて 明日も晴れますように おやすみ おやすみ 娘を残して 男は消えた 必ず迎えにくると言ったきり トタン屋根に降る 今年はじめての雪 娘はいつしか大人になった 娘はいつしか大人になった