新聞紙 あおぐ風 頬なでる 夏の夜 おぼろげな あの香り 畳ふむ素足で 明るさは さみしさの 裏返し 夕げ時 聞き慣れぬ ラジオ鳴る 襖ごしの灯り 風鈴の音も花火も ゼームス坂の話しも 祭りの笛の音も 悲しく聴こえた幼き日 時はとまることもなく すべてを置き去りにして いつも何もなかったように 刻みつづけるだけ トルコキキョウの香りに ゼームス坂の話しに 時間だけが癒せるものに 気づかぬ幼き日 時はただ進むばかり だれにでも同じ早さ 夜に消える日時計にだけ 心休まる日々 母を待つ 祖母と待つ うれしさと不安さと 戻れぬと わかるから いまは懐かしさに