ベッドの枕元に飾られた花たち 点滴を打たれないからすぐに枯れてしまう 『出来ること』は増えていく 『今まで出来ていたこと』は減っていく 歳をとるってことを少しだけポケットに入れて 終わりの予感に震えながら生きていくんだね いくら心がボロボロになって 何かを憎んでしまっても生きてる 死んでいないなら また海まで行こうね 枕元のネームプレートには 『性別』と『年齢』と『生年月日』と 『フルネーム』が汚い字で 書かれてる 『生まれた日』 『生きてきた日々』 『愛する人から呼ばれてきた、 とてもとても愛おしい名前』 『美しい名前』が いくら体がボロボロになって なんにも見えなくなってしまっても生きてる 死んでいないなら また海まで いくら心がボロボロになって 何かを憎んでしまっても生きてる 死んでいないなら また海まで行こうね 「そうだよね。また海まで行こうね!」 病院から(2012年1月横浜)