血は断崖の上に登り 憂いは立橋の下を低く歩め。 無限に遠き空の彼方、続ける鉄路の柵の後ろに 一つの寂しき影は漂う。 あぁ汝 漂泊者 過去より来たりて未来をすすり 久遠の郷愁を追いゆく者 いかなればそうじとして、 時計の如くに憂い歩むぞ 石もて蛇を殺す如く。 一つの輪廻を断絶して意思なき 寂寥を踏みきれかし あぁ悪魔よりも孤独にして汝は焦躁の冬に耐えたるかな。 かって何者をも信ずることなく 汝の信ずる所に憤怒を知れい。 かつて欲情の否定をしらず。 汝の欲情する者を弾劾せり。 いかなればまた憂い疲れて優しく抱かれキスする者の家に帰らん かつて何者をも汝は愛せず。 何者もまたかつて汝を愛せざるべし。 あぁ汝 寂寥の人 哀しき落日の坂を登りて 意思なき断崖をさまよいゆけど 何処に佳境はあらざるべし。 汝の佳境はあらざるべし。
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