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説明文

世界中の車がある日を境に主を乗せずに動きだした。鍵を指してもドアは開かず、ガソリンが切れても止まらず、好き勝手に動いたり止まったりしている。時には車体を壁に擦りつける車もいる。そのうち交尾をして、トランクからベビーが「ガシャン!」と生まれるようになる。人間は最初、怪奇と思わず、不思議。と捉えていた。それほど車は身近でかわいい存在であった。だが車が主から離れて、車同士で社会のような、秩序のような、家族のようなものを勝手に作り出すと、主にはそれは車ではなく野生の生き物に見えなくもなかった。それは、カラス、野良の犬や猫のようなものに見えた。工場は製造ラインをとっくの昔に止めた。ニュースの解説では、あらゆる機械にこのような現象が起きる可能性について話していた。とにかく、刺激しないように。と。ではTVやラジオという機械はどうなのか、という話だが、まあこれはフィクションなのだから放っておいてくれ。でも、ある日、どこかの男たちが街で車を狩りだした。罠を仕掛けて、調教と称してガラスを割り、車体にもぐり込み好き勝手にした。そして、言う通りにならぬものを潰したり、焼いたり、吊り落としたりした。街中の其処もかしこも悲鳴のような悲しいクラクションの音が鳴き渡った。すると、今まで誰も聞いたことが無い低いエンジン音が、そこいらの闇の中から聴こえて来て、タイヤを引きずる絶叫のような音とともに近くにいる人間を大人も子どももかまわず引き殺しだした。だんだん街中がパニックになると、車達は執拗に念入りに人を殺しだした。車達は、人を探して狩るようになった。時には数台で人をなぶり殺しにした。人間は少しずつ街から去って行った。あるものは島に逃げた。山に逃げた。それぞれの理由があっての選択だった。しかし、山には重機が入り人間は追い出され、狩り出された。たくさんの人間が押し潰され、それが道になった。人間の油で車達のタイヤが足をとられても気にせず、そのスリップを楽しむように踊った。そんなことが50年近く続いたある夏、各島から人間達が大挙して本土に押し寄せた。人間の反撃が始まったのだった。彼らは…。
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