紅涙の雫で滲んだ、黒く醜く、 呪われたおとぎ話。 ♪ 彼の宿命に嘖まれる体は 生まれつきの物でした。 世界が滑らかな闇に 染まる時刻になって。 煌く「それ」を見つめれば、 もう彼は。 夜に苦しむ私の目の前には いつかの祝福がありました。 歪な風の音や、ただ悲しむ森。 それと赤い頭巾。 「少女」 月光の世界に呪われて、 醜い体に変化してゆくんだ。 「お前は私の事が怖くないのか?」 そう彼が訊くと、 少女は優しく微笑んだ。 そして彼は、愛してはならない 少女を愛してしまった。 ♪ 少しの間、優しい少女との 幸せな時間がありました。 ですが彼は呪われて血に飢えた獣。 きっといつかはこの少女を 傷つけてしまうでしょう。 彼はそうなる前に、 気付かれぬように そっと消えてしまおうと 考えたのです。 「ごめんよ、さよなら」 少女の幸せを願ったのは、 醜い獣。呪われた狼。 最後に残ったのは 紅涙の雫で滲んだ 彼の笑顔と赤い頭巾と、 月の光でした。 「嗚呼、最果ての月よ。 どうか彼が安らかに 眠れますように」