3月 やわらかな陽射しが 入り込むようになる 言い表せないやるせなさを そっと包み込んでくれた 4月 幸せと散歩する予定だったはずが、 海の向こうから、憎悪が、殺意が、 それと少しの優しさが 浜辺に打ち上げられた 5月 大きな怪獣が海から現れて、 ぼくらの街は壊されていった ちっぽけないのちなのだと、 みんなが気がついた 6月 何か言えたらよかったな 何も言えなかったから なんて言うなら、言えばよかった それだけのことが、 どうにも難しかった 7月 すっかり街も静かになって あれだけうるさかったテレビも、 SNSも、動かなくなった 耳鳴りも、もうしなくなった 8月 光の雨が降り注いだ 9月 遺されたビルや車の跡 こういうのがきっと 映画やゲームで見た古代文明になる そんなことを考えていないと やっていけそうにもなかった 10月 指先が悴んだ 例年よりずっと早く雪が積もった まるで、 流れすぎた血を隠すみたいに 11月 つまらない御伽話を考えることに とっくに飽きてる自分に気がついて なぜだか涙が出た 12月 泥水から人間を作り出す実験に 成功した 13月 宇宙人が地球に攻めてきた 14月 昔の恋人から連絡があった 15月 第3658次世界大戦が勃発した 16月 アンドロイドたちが人権を訴え、 反逆を開始した 17月 お母さんの料理が恋しくなった 18月 もうだれもことばを使わなくなった 19月 その先で君に会いたかった