今、あなたのことを 思い出したところ 梢の蕾が少しずつ膨らみはじめた頃 春を待たないまま あなたはいなくなって 不自然に空いた生活の穴 埋まりはしないままだ あたまの中にあなたのひびき 鼓膜にはもう届かない声 吹き抜ける風 すり抜ける影 滲んだようなひだまりみたいな 声が響いてる はじまりの奇跡も おわりの騒めきも 美しく綴られた小説みたいに 季節は捲れていく さよならも ありがとうも ごめんも またねも いつかみたいにふざけたことも 言えなかったな 届いたのかな それすらもう分かりはしないけれど あたまの中にあなたのひびき もう聴こえることはなくても 覚えているよ 大事にするよ 滲んだようなひだまりみたいな声を 忙しなく電車は今日も駆けていく すぐ赤になる信号機の癖 交差点の隅であなたと見た 桜の蕾が少しだけ開いてる 響いてる