浪江の街の請戸の港 カモメの群れが飛んでる 秋のコスモスが咲いて 子供たちがはしゃいでる 請戸の海から魚たちも 川を上ってしぶきをあげてる 浪江の街の立野の丘に 牛たちの群れが生きてる 立ち並ぶ朝の牛舎から 生き物の匂いがあふれてる 男たちは藁を運び 毎日牛たちの背中をさすってる だけど全てが消えてしまった 全てが無くなってしまった 子供の声も消えちまった 漁師の声も消えちまった 農夫の声も消えちまった 牛たちの姿も何もかもが やせ細った野良牛たちの 瞳をどうやって見つめればいいの 僕が歩いてきた道は 正しかったのか! したたり落ちてく命の 最後の最後の一滴を コメカミに突きつけてみた 今一度問いかけてみた 僕たちが歩いてきた道は 本当に正しかったのか! 浪江の街の駅前の ひしゃげたまんまの商店街 パン屋も床屋も雑貨屋も 命の音が聞こえない 全滅していた暮らしの中 壊れた信号機だけが点滅していた 僕はただ立ちつくし 空を見上げて泣いた 男は牛たちの乳を 泣きながら搾っている 来る日も来る日も毎日 泣きながら乳を搾ってる 捨てては搾って 搾っては捨てて泣いてる 男は牛舎でつぶやいた 「原発さえなければ…」 秋のコスモス畑で も一度君たちと会いたい 秋のコスモス畑で も一度君たちと唄いたい 秋のコスモス畑で 君の背中を追いかけたい 請戸の海から昇る朝陽に も一度抱かれて泳ぎたい 生きたいと叫びながら 消えてった農夫たち 生きたいと叫びながら 消えてった漁師たち 生きたいと叫びながら 消えてったあの時の夕焼け やせ細った野良牛たちの 瞳をどうやって 僕は見つめればいいの (カモメよ) 浪江の街の請戸の港 (飛んでくれ) (カモメよ) カモメの群れが飛んでる (高くもっと) 4本の煙突の向こう (高く 高く 高く 高く) 何も知らずに飛んでる (飛んでゆけ) 低く垂れこめた真冬の空 ハラハラと白い雪が降ってた (カモメよ それでも高く) 止めてくれ (止めてくれ …) 原発を 止めてくれ (止めてくれ …) 今すぐ (今すぐ) 母親から子供を引き裂き 子供から母親を裂く 乳房をくわえる赤子の 瞳をどうやって 僕は見つめればいいの 帰りたいなあ wow wow wow wow 帰りたいなあ wow wow wow wow 生まれた場所へ wow wow wow wow 帰りたいなあ wow wow wow wow 命の音を抱きしめて 浪江のカモメが空を飛んでゆく (カモメよ 空高く) カモメよ (カモメよ) 飛んでくれ (飛んでくれ) カモメよ (カモメよ) 空高く 高く 高く 高く 高く 高く 飛んでくれ 母親から子供を引き裂き 子供から母親を裂く 乳房をくわえる赤子の 瞳をどうやって 僕は見つめればいいの