みふゆつくアトリエ わたしだけが止まる ストーブの熱と知らない音楽の中 あなたはクッションを幾枚も重ねた 椅子の上 イーゼルの下桟に足を乗せた その背中を丸めて描く姿が好きだ シンクにこぼした絵の具が 名もない色になる 大切にしたかったあれもこれも通り 過ぎていった 生まれてくる言葉を 思い切れずにため息と流した あなたの目には何色に映ったの? 誰かが忘れた本を膝に置き ページ捲らない指 たまに呼吸する肩 窓辺に差し込む午後の陽に 目を細めた横顔が綺麗だ 君は春を待つ妖精 あと15分でこの異質で穏やかな 関係は終わる 君のことどこまで 描きたかったんだろう 花瓶に残された薔薇が 名もない色に咲く どんな傷だってただの通り 道だったのと言って 埃かぶった希望はいつも 突然目の前に現れる 今を取りこぼすだけだったけど それを一つ一つ 拾っていくあなたのキャンバス 全部描いてよ