夕立が街を洗って 午後の微熱を下げた 私は魚になって退屈なこの街を 泳ぐ 君の前では言葉も すっかり意味を失って その圧倒的なきらめきを前に 私は成す術もない 君が雑に書いた 私の名前が好きだった 鉛筆の黒が移った 手の縁に気を取られて 日が暮れたことにも気付かずに 夜の児童館の前で 口付けた君は悪魔だった 貧血気味な私は 全身の力が抜けてしまって 肘のあたりに夏が伝った 何を考えていても 君に辿り着いてしまう 私の不毛なこの思考回路を 呪ってやりたいよ そんな涼しげな目をして 私を見ないで もっと一生懸命私だけを見て 離れられなくなって 君のめがねの跡に そっと触れた時分かった 私のものになんかなる はずないぐらいに 君が遠いこと 夜の児童館の前で 口付けた君は悪魔だった もう遅かったみたいだ どうやって打ち消しても 愛しくて泣けるの