初めて抱きしめられた時 君の鼓動が思ったより速くて 私はばかだから それだけで嬉しくて泣いたのでした 君はすぐに言い出すだろう 「あの夜はどうかしてた」と 私はそんな君を憎む エネルギーだけで 一生生きてゆけるの そんな事はよくあることだと みんなは言うけれど 君を好きになった時から 私はやっと人間になれたの 君のシャツと私のTシャツが 擦れ合う音が頭から離れない 六月の夜がこんなにも 寝苦しいなんて知らなかったの 汚れててもいい その瞳で見つめて 世界には力ずくでも 手に入らないものが沢山あるのね 自分がちっとも特別じゃないって やっと気がついたの 降り出した雨が私のTシャツに 少しずつシミを残しては消えてゆく 君のシャツと私のTシャツが 擦れ合うことは きっともうないでしょう 六月の濡れた街路樹に 確かに変わった私がいた