大丈夫 そばにいるよ だから今は おやすみ 目が覚めた時 世界が変わっていても 君は君だから 大丈夫 そばにいるよ 全てを受け止めるから だから今は おやすみ ガイさん。 大丈夫? 心配をかけてすまない。 ガイ、記憶は? ああ……全て思い出した……。 幼い頃、俺は日本に住んでいた 売れない役者だった 日本人の父とザフラ人の母…… 三人家族の慎ましい暮らし 俺は昔からあまり感情を 表に出さなかった 母が普通の子供と違うと 心配するたび 父はそれを笑い飛ばした 無理して普通にすることはない 自分を偽る必要なんてない 父はいつも俺を安心させてくれた そんな父が……大好きだった…… 父はある日、MANKAIカンパニーの 公演に連れて行ってくれた。 生まれて初めて見る芝居は 楽しくて、すごく感動したことを 覚えている。 それからしばらくして 両親は離婚することになった…… 一方的に離婚届を突きつけると 母は俺を連れてザフラ王国へと 帰ろうとした 別れ際、父は俺に あのお守りを握らせた いつか、きっと迎えに行くと…… じゃあ、あのお守りは お父さんが……。 だからあんなにボロボロ だったのだね……。 帰国してまもなく、母は再婚した 新しく出来た義理の父は 感情を見せない俺を 気味悪がって敬遠した お前はただのアンドロイド! 感情のないアンドロイド! 繰り返し非難され威圧され 俺はいつしか心を閉ざした…… 父さんとの思い出も いつしか…… 思い出せなくなった…… この年まで自分を アンドロイドだと 思い込んでいたなんて、 愚かにもほどがある。 ガイさん自身の心を守るために、 そう思い込むことが 必要だったんだと思います。 ……シトロニアも俺を 憐れに思っていたんだろう。 わざわざそのお守りに記録を 残していたのも、 そのために違いない。 違いますよ。シトロンくんは、 この写真と同じように ガイさんが笑顔になれる日が 来ることを願っていたんだと 思います。 いつか、心の底から 笑えるように、って……。 ……お守りの中に これも入ってた。 『涯がたくさん笑えますように』 ……父さんだ。 涯がたくさん笑えますように 涯がたくさん笑えますように ずっと祈っててくれたんだね 思いだす 大好きだった父さんの温もり 凍り付いた心が溶け出して 音を立てて動き出す オイル漏れか……? それは涙です。 ……そうだな。俺は人間だ。 思いだした家族の思い出 大丈夫 君は君だよ 思いだしたあたたかい記憶 全てを受け止めるから 胸の奥が熱くなる 例え何が起ころうと これは俺が生きている 一人じゃない 証 ありがとう父さん 俺の幸せを祈ってくれて これからは 一緒に笑おう ありがとうシトロニア 大切な大切なことを教えてくれて これからは 一緒に涙を流そう 心が今 もう大丈夫 動き出した これからは これからは もう 止まることはない 一人じゃない