夏の夜、 太陽は早々と夜を終わらせようと 遮光したカーテンの隙間から手を 伸ばして私を引っ張るから 私にとって夢は 唯一の逃避行でした。 どうしていつも終わりばかりが 美しく見えてしまうのだろう。 夏は嫌いだけど夏の終わりなら 少しだけ愛せる気がした。 この命がいつか終わることを 知ったとき、 初めて生きたいと思えた。 いつだって、 儚いものにばかり 焦がれてしまいます。 幸せになるために 生きているんだって。 じゃあ救われてしまったら 未来なんてもういらないね。 夢から醒めて、 そこが現実よりも私の理想郷だと 知ったとき、とても哀しくなった。 だからこれは夢への移住計画、 こちらの世界が先に終われば私は 本当に生きたかった世界へ逝ける のでしょう。 それは、夢から醒めた朝 それは、 心模様とは裏腹によく晴れた空 それは、時計の針が反響する部屋 それは、端末の通知音 それは、車窓越しの鉄塔 それは、帰り道 踏切の音 それは、唇の温度が無くなった瞬間 それは、言葉の代わりに出た涙 それは、日常の引力 気が付けば外は戦場でした。 だから私は部屋の中で眠って この世界の終わりをずっと 待っていたんだ。 夏の終わりにノスタルジックな 気持ちになるのはきっと、 私にも還る場所があるから。 いつだって、 儚いものにばかり 焦がれてしまいます。