街角で黒髪の女子を見ると 想い出すあの頃 一目逢って瞬く間、 桃色の矢が刺さる モダンバレリーナと 貞操と清潔の谷間に 薄情を埋めて 白目向いて 四つん這って 色に溺れる あの日、モダンバレリーナと あの娘の匂いだと 想っていたものは、 市販のシャンプーの匂い アレの匂いだと 想っていたものは、 俺の涎の匂い、 或いは君の 白けきった横顔で告げる さよならの匂い 世界中の明かりを消すと 本能が零れて 零コンマ数ミリが歯痒い夜 あの日、モダンバレリーナと 面影は時にヒル状と成って、 頭を這いずる 愛なんて、寂寞感に巣を作る 色欲みたいなもんさ、 と想っていた あの日の俺じゃあ解らないんだ あの子の涙は 桜の下で「さよなら」と、 少し大人びて君。 口付けても彼女は魚の眼さ あの日、モダンバレリーナと 最後の恋をしていた