ぼくは息をする 誰かの酸素を奪ってまで 息をしている 今日も目を逸らす 自分が苦しまないように 目を逸らしてきた 通り雨が過ぎ去るように 硝子が割れて散っていくように 瞬きする間に消えてしまいそうな光 誰かの決める正義に縋り 傷付くことを恐れ ぼくは「生きることは尊い」と 借り物の言葉で嘯く 嘯く きみは慣れていた 摩耗することに 悲しいほど 慣れてしまっていた 例えば死だけが救いだとしたならば それを取り上げることはとても 残酷に見えて 止まない雨はない、だなんて 明日はきっと晴れるよ、なんて 軽々しくきみに言えやしないから その隣で傘を差そう その隣で雨を受けよう 心だけは近くにいるんだと 歌ってみるよ 歌うよ これしか 傘の内側から見た景色は あまりに暗く そして孤独だ ならせめて今をただ きみと過ごしていたい 生きて欲しい だから 生きて欲しい 建前なんかじゃなく 押し付けてしまっているのかな この想いはきみを縛るかな かつてはきっと 言えなかった言葉 今ぼくに何ができるのだろう 今ぼくに何が言えるだろう 名前を呼ぶよ 何度も何度も 止まない雨はない、だなんて 明日はきっと晴れるよ、なんて 軽々しくきみに言えやしないから その隣で傘を差そう その隣で雨を受けよう 在り来りな言葉でもいいかな 心だけは近くにいるんだと 歌ってみるよ 歌うよ ぼくは決めたんだ 2人で酸素を分け合うと ぼくが決めたんだ