そこは近付いてはいけないよ 草茂る 地蔵の首転げ ぬかるみ山 雨の夜に御山の裾踏んずけて 落っこちた そこは陽が射しても見えないよ 挫き足 いたいから助けてよ うらら つらつら若い椿が真っ赤な裾 ひとつだけ落っこちた 大丈夫 戻るから待ってて 鳴りやまない耳鳴りがこわくなる 誰にも言えず 腫れた目も引かず 口がくっついてしまった そこは近付いてはいけないよ 屋の棟も下がる夜に幽霊がやっと 来たねと 待ってたよ 笑うなりぼろんと目の玉落っこちた どうか気が付いてはいけないよ 歳とるいたい膝 縁眼鏡 笑い皺はひとつもないが家族もいる 真っ赤なうそ落としたまま 私ってわかるかな わかるならなにがこわい ぬかるみに命とられようともなにも 言えない 大丈夫 戻るから待ってて 耳鳴りが泥になり ぼたぼたとこぼれ 清かな水で洗えたなら