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深海の手引き (feat. 仮名)

Track by故やす子

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  • 2022.06.15
  • 2:19
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歌詞

帰りたい。 そんな文言が脳裏をよぎると、 もう足は止まらなくなった。 何処までも続く青へと伸びる道を 駆け抜け、 僕は空に沈むような心地で身を 投げた。 力強く受け止めてくれたのは 流体だ。 肌を撫でていくのは空気の玉で、 聞こえてくるのは心臓の音。 射し込む光すらも追い越して、 僕は急くように足をばたつかせた。 早く、早く。 ちっぽけな僕を大きな腕で 抱いてほしい。 途中、 魚の群れを分断するように通り 過ぎていく。 ふと、目があった。 群れを外れた鰭が不格好な 一匹がこちらを見つめている。 その見覚えのある姿が僕を苛み、 苦しいものを吐き出したくて、 僕は、僕を、 目尻から宙へと返した。 「坊や、おかえりなさい」 聞こえてくるのは、心臓の音。 あとは何も。 だから、聞きたいように聞いた。 「坊や、おかえりなさい」 ただいま。 「世界は美しかった?」 時々。 「何が聞こえる?」 心臓の音。 「何が見える?」 何も見えない。 「何処に帰るの?」 ここじゃない何処かへ。 心臓の音が一際大きく聞こえる。 またあの声が僕を呼ぶ。 坊や、坊や。 僕によく似たその声が、 何度も何度も僕を呼ぶ。 「何が見える?」 何も見えない。 「何が聞こえる?」 何も聞こえない。 「おかえりなさい」 ただいま。 「そして、おやすみなさい」 青い御霊に抱かれて 眠りにつこうとするけれど、 あたりはすっかり真っ暗で僕は 心底がっかりした。 気づけば、 耳が痛いほどの静けさが僕をじっと 見つめている。 最後の最後まで見つめて、 きっとすぐに 興味をなくしたようにそっぽを 向くんだろう。 そんなことに気づいても、 今更なのだけれど。 僕はただ、 愛されたかっただけなのだけれど。

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