それは一度だけの奇跡 訳分からないまま ここにいる この世と呼ばれる 此の地に生まれて 息吸って吐いて 日々過ごしてる それは二度と起きない奇跡 陽はまた昇り くりかえす 日々過ぎてゆき 歳老いてゆく 枯れ木のように 朽ち果ててゆく ※赤や藍色 白や黄金色 それぞれの色で輝く 遠く近くに 生まれては消え やがて夜空に吸い込まれる それはもう一回だけの奇跡 君に逢えた あの日の午後 それぞれの道を 歩んでいたのに いつしか交わり 一緒に歩いてる ※くりかえし 僕は君と花火みてる 何もかもが夢のよう 確かなものに触れたくなって 君の手をギュッと握りしめた ※2回くりかえし (朗読) 「その時露台に集つてゐた 人々の間には、 又一しきり風のやうなざわめく音が 起り出した。 明子と海軍将校とは 云ひ合せたやうに話をやめて、 庭園の針葉樹を圧してゐる 夜空の方へ眼をやつた。 其処には丁度赤と青との花火が、 蜘蛛手(くもで)に闇を 弾(はじ)きながら、 将(まさ)に消えようとする 所であつた。 明子には何故かその花火が、 殆悲しい気を起させる程それ 程美しく思はれた。 『私は花火の事を 考へてゐたのです。 我々の生(ヴイ)のやうな 花火の事を。』 (『我々の生のような花火の事を』) 暫くして仏蘭西の海軍将校は、 優しく明子の顔を見下しながら、 教へるやうな調子でかう云つた。」 ーー芥川龍之介「舞踏会」より 僕は君と花火を見ている。 何もかもが、夢のよう。 僕は君と花火を見ている。 何もかもが、夢のようだ。 何だか 確かなものに触れたくなって、 思わず君の手を、 ギュッと握りしめた。 赤や藍色、白や黄金色。 それぞれの色で輝いている。 赤や藍色、白や黄金色。 それぞれの色で輝いているんだ。 遠く近くに生まれては消え、 やがて夜空に吸い込まれる。 遠く近くに生まれては消え、 やがて夜空に吸い込まれる。 永遠に。