夜空を焼いた八尺玉 闇は初めて近くで花を目にした 人は初めて花火が 星を集めてできていると知った 轟音は木々をめくりあげ 雲には穴が開いた 昼のように明るくて熱い 大釜が生まれた これは地の底まで 続いてるんだと言われていた そう言われてから、幾星霜 かの大釜には水が張り 何かを待っているようだった 静かに増える波紋は 悲しみの呼び水となっていく 夜空を焼いた八尺玉 雨は流れて気紛れ 川を呈した 僕は慌てて傘開き 宵を歩いて生きていると知った カルデラのほとりで浴衣姿 時間が色づくシャッターを待つ いつかあなたと見た花火は 蛾(ひいる)の鱗粉を燃やすように 虚空に散っていきました 夜空を焼いた八尺玉 滝が立てた泡沫の 一つ一つに ひらいては消える瞬き 風が走る黄金の薄