もう昔日の光も届かない 闇の中で 触れた音に意味を灯す 慰めの言葉さえ聞こえない 夜の底を歩いて 邪に時を待つ きっと他人とは違うから 此方から鍵をかけて 宵越しの情は持たぬように 持たせないように生きてきたの 湖畔にそびえるカテドラル 取りつく島もなく誰かが鐘をつく 濡れ手で掬った優しさの重さを 量って 口元に運ぶけど 今日も明日も隙間風が冷たい だからせめて 握る筆に熱を込めて 享楽を好きなだけ浴びていい あてつけを間に受けて いたずらに手を伸ばす 磨り硝子越し 微笑みが透けたらと臍を噛んで 目が合った時 逸らさずに祈るように 両の手合わせても 涙を湛えたリトグラフ 足りない言葉数埋める色を探す 鼻垂る赤子に向けられた鼻歌の方が 精彩を放つみたいだから 憂鬱が染み付いた六畳で 溺れるほど不器用に声を注いで 愛を込めて もう昔日の光も届かない 闇の中で 触れた音に意味を灯す 慰めの言葉なんていらないの 夜の底に沈んだ部屋に 差し込む一筋の光を掴むの