花火大会の喧騒ん中を 「おーいこっちだよ!」と あの子が呼んでいるよ。 出店の背の低い提灯に 頭をぶつけて それを見てあの子は笑う。 花柄の浴衣の 袖を振らし こっち見て 僕を誘ってるよ。 祭りの後 揺れる提灯、恋色模様 金魚すくいに残った金魚が跳ねて 水面をざわつかせる 祭りの後 鳥居の段差に座る あの子は 一体何を想っているだろう。 枝垂れ花火のラストスパートに 「もう終わっちゃうよ」と あの子がつぶやくから。 来年も来ようねと言いたくて 口を開くと 最後の花火にかき消された 思わず、話題を変えてみる 「最後に買ってきた 閃光花火をやろうか」 祭りの後 二人の間に光る閃光 どんな願い事をしてるか 知りたくもなるけれども。 祭りの後 爆ぜる線香花火の あのツンッとした匂いが 夏に溶けていく。 祭りの後 走るあの子が夏を連れてく 火花のような焼き付いた一瞬を 祭りの後 駆けて下りてく髪をさらりと 今、追いかけていこう。