演じる間すらもくれなかった 悔しくも甘いこの明朝は 囀りと寝息 遠すぎる唇 あれほど混ざり絡まりあっても 昼に向かっては虚しくなるの なんて都合のいい夜とこの私 匂いなど残さないで ひとりでさせないで あの子のもとへ帰す時 またひとつ即興の台本を読む 歓声もアンコールもいらない 舞台の傍で待つの 拍手喝采が止むまで あなたが帰り去るまで ラストシーンぐしゃぐしゃの泣き顔 愛しさで迸った一人雨 なんて気付かせないから 隠す恍惚 私は女優 青春と呼べたあの数センチが 私にとってのすべてだったと 今更解って 無駄に虚しいわ あの頃のふたりは まだ何も知らなくて 他愛もない恋の帰り道 繋いだ手 離してしまったの また会えると思っていたから いつでも前を歩くのは あなただったしそれで良かったの でも先に大人になったのが あなただったことだけは許せなくて 違うの 誤解しないで 本当に怒っているのは 一緒に連れてってくれなかったこと 私じゃなかったこと どうしようもない終わり方で ふたりの幕は下りるの 思い違いの次元で生きてた バカな私をぶってはくれない 割れたブザー音 ホリゾンの照明 また次の私が彩られていく あなたが逃したものを 魅せてあげるわ 歓声もアンコールもいらない 私は舞い上がるの 拍手喝采が止んでも あなたは帰さないから ラストシーン感動の渦に零した 一番大切な想い出にさよなら 隠せ恍惚 何度だって 歌って踊って 笑ってみせるわ 私は女優