――忘れたくない「痛み」 があるんだ 極彩色の庭園で 季節外れの 白く控え目に一輪 夏の暑さも 世界の不条理さも 君はきっと 無縁で知らなかったのだろう 惹かれ合ったのは遠い遠い昔 交わした言葉 砂のように零れ落ちる 強烈な日差しがまた アスファルトに陰を落とす 募る悲しみが それだけが 残された 大切な傷跡 「大丈夫、まだ痛みは在る」 凪といえば凪 黄昏が心地よい 思い出徐徐(おもむろ)に闇に 溶けゆく この悲しみはいつか消えて 心は穏やかさを取り戻しても 夏に似つかわしくない 儚いその花の名前を 「大丈夫、大丈夫」 まだ覚えている 枯れゆくと知って 花は咲く 咲いていた 「どうして、どうして、君なんだ」 花が落ちたのも遠い遠い昔 記憶のかけら ゆるやかに剥がれ落ちる なだらかな下り坂の 終点(おわり)見ては 陰が伸びる 水面は静寂 星は淀みなく空を流れ 「そちらは変わりなく 過ごしてますか?」 移ろう季節は 波のように寄せては返す 君と僕のすべて置き去りにして この悲しみはいつか消えて 心は穏やかさを取り戻しても 夏に似つかわしくない 儚いその花の名前を 「大丈夫、大丈夫」 まだ覚えている 決して忘れない