君は、はしゃいでいた。 あいもかわらず、 明るい笑顔を振りまいて。 「ねえ、来年は、私たちの、 結婚百周年よ。」 僕の頭はクルクルと回転して、 二十二世紀の風景を見ていた。 僕たちは、屋上が、 ガラスのドームの、 美しい建物に住んでいた。 ガラス・ドームの屋上は九階で、 サニールームは、 バラの花が咲き乱れていた。 僕は赤いバラのそばを通り過ぎて、 黄色いバラを見つめていた。 君は、 君は、 ロシアの民族衣装を身につけて、 髪にはカチューシャ、 足には、赤い靴をはいていた。 「ねえ、踊らないこと。 昔、一緒に踊ったでしょう。 一度きりのタンゴを。」 僕は一体何歳なのだ。 君も、百二十六歳のはずなのに、 君は永遠の二十代のままだ。 ここは、日本なのか、 ロシアなのか。 僕にもそれが分からない。 ただ螺旋階段を降りた 下の部屋には、 多国籍の子供たちが遊んでいた。 世界は争いもなく平和だった。 僕は、結婚百周年に、君に贈る、 石榴のような ダイヤモンドのペンダントを、 心の中で描いていた。 僕には、僕自身の姿は見えないが、 大いなる喜びと幸福で、 僕の心は一杯だった。 二十二世紀も世界は美しかった。 僕はそれだけで、 両眼を涙で一杯にした。 君が白いウェディング・ドレスで、 僕の胸の中に飛び込んで、 「あなた、 これですべて良かったのよ。」 とささやいた。 僕らは、一つの時代を、幸せに、 過ぎ越したらしい。 僕は光と一体となって、 幸せをかみしめていた。