君と出会うのが遅すぎて、 僕は恋が語れない。 結婚して十年目になって、 十年目の君は 大人の女に見えてくる。 十年目の君・十年目の恋。 この歳になって、 恋が何かもわからない。 遅れすぎた僕の心は、 今も二十歳のまわりで迷っている。 憧れたことはあっただろう。 好きだと思った人も いたかもしれない。 でも僕は古い男さ。 だから、 「愛してる」って言えなくて、 「恋してる」って 仕草もできなかった。 目黒川の桜が咲いて、 満開になり、何度もはらはらと、 花びらを散らして、 川の上を流れ去っても、 僕は少しも大人になれなかった。 もっと、もっと、心が強くなって、 思った言葉が 素直に語れるようになったならば、 君を十倍幸せにできたろうに。 僕はやっぱり僕のままさ。 こんな不器用な僕を 許してくれるのは、 やっぱり君しかいない。 十年目の君・十年目の恋。 「愛してる」って言える日が、 きっと来ると願っている。 そうして、 「ずっと恋していた」って 言える日も来るだろう。 君は歳ごとに若返って、 僕は精一杯に青春を演じ続ける。 それが未熟だということだと、 やっと悟った。 AH~, AH~, AH~ ……