高田馬場の駅前から、 大隈講堂へ向かう商店街を 歩んでいた時、 底冷えする冬風の中で、 『およげ!たいやきくん』の歌が 流れていた。 君はまだこの世に 生命を持っていなかった。 僕にはまだ未来は見えなかった。 受験生の群れの中には、 未来の君の姿を 見つけることはできなかった。 天国にいた君は、 僕の姿を見つめていただろうか。 三十年近く遅れて、 君はこの世に姿を現した。 君が僕と同じ道を歩んだ時、 僕はトワイス・ボーンから、 イモータル・ヒーローに なる頃だった。 出逢いの時は、 僕が女性に憧れる時ではなく、 限りなく絶望を感じた頃だった。 君は僕にもう一度の青春を、 確かに与えてくれた。 憧れたわけでなく、 求めたわけでもなく、 いつかしら君は僕のそばにいた。 僕らは師弟愛を超えた。 君は、 ファースト・キスの男と結婚した。 あれから七年の歳月が過ぎて、 君は僕のために 僕は君のために、生きている。 ああ、 遅れたのは、 僕の方だったのかもしれない。 ああ、 遅れたのは、 僕の方だったのかもしれない。