ひと夜降り続いた 静かな雨が 夜明けに季節はずれの 沫雪にかわった 瓦屋根に落ちて すぐに溶ける 儚ない白い雪に 手を伸ばしてみる 薄ら陽と空のはざまを舞い 束の間だけをささやかに生きた あの 沫雪のように あゝ あの人の愛も 春を 待ちきれないまま 流れていった 愛を語り過ぎた 朝にやってくる 虚ろな静けさの中で 愛した人は遠い 想い出と呼べる ものがひとつ 一本の小さな棘が 胸に刺ったまま 薄ら陽と空のはざまを舞い 束の間だけをささやかに生きた あの 沫雪のように あゝ あの人の愛も 春を 待ちきれないまま 流れていった あの 沫雪のように あゝ あの人の愛も 春を 待ちきれないまま 流れていった