言えなかった だけの言葉が いまさら胸を締めつける 無口だった僕の癖に こんな夜だけ饒舌になる 言えなかった だけの嘘でも 君には全部届いてた やさしさでごまかした日々 ほんとは僕の方が こわかった 雨に濡れた白線の上 つま先だけで歩く帰り道 何ひとつ変わらない景色に なにもかもを置いてきた気がした 「だいじょうぶ」って言うたびに 自分が少し透明になって 誰も悪くないって 知ってた でも誰のことも信じられなかった コートの裾が風になびいて 言い訳がまだ襟元に残る 選ばなかった方の未来が 踏切の音にかき消された あの時 君が黙った意味を やっと今日 分かった気がした 「強くなれ」って言葉だけが こんなに弱く響くなんて 言えなかった だけの言葉が いまさら胸を締めつける 無口だった僕の癖に こんな夜だけ饒舌になる 言えなかった だけの過去でも 誰かの未来を曇らせる もう一度会えたとしたら ちゃんと僕の声で 君を呼ぶ たとえば違う名前で 出会ってたら 変わったかな でも そうじゃなきゃ 見えなかった 景色もあった気がする 誰かの夢に触れたくて 夜の影ばかり集めてた 自分のことは棚に上げて 君のせいにしてた毎日 歩幅が合わないふたりだった でも足跡はちゃんと並んでた 見送る背中のぬくもりを いまさら愛って呼びたくなる 言えなかった だけの言葉が いまさら胸を締めつける 誰かのせいにしてた僕は 君の名前すら言えなかった 言えなかった だけの愛でも 君にはちゃんと届いてた だから今 この声だけは ちゃんと「ありがとう」を 君にあげる
