閉じた箱の中には からくり仕掛けのオルゴールが 艶やかなまま眠る 何度も救われてきた音と 弱い僕の記憶だ だからもう開けないでいるよ ごめんね、僕は行くよ けれど怒らないで聞いて 心配はいらないから すり減るほど聴いたさ 春の嵐が強く吹きつけて 花の栞ごと思いをめくって 新しい場所へと君はいくのだろ? 涙を堪えて言うのだろう さよならと 錆びた錠を悲しむ素振りも見せずに 君が閉じる 明日から別々の道を行く ありがとう、君が言った けれど振り返らずにいたよ 去りゆく二人の背を押すのは 同じあの曲だった 懐かしいは懐かしいまま そこに足を止めないで これからの日々と移る季節の中 出会う大切な人と 春の嵐が強く吹きつけて 花の栞ごと思いをめくって 新しい場所へと君はいくのだろ? 涙を堪えて言うのだろう 春の嵐が強く吹き付けて 桜の散りゆく時を急して 次の季節へともう行くのだろう? 雨宿りもせず、そのまま行け。 さよならと