芝居の幕がおりた後も 拍手の波がひいても ここには残っている ときめきの欠片が 忘れはしない あの日の決意 かなえるあてもないままに 虚しく時は過ぎる 舞台だけが 俺を慰めてくれる [「生か、死か、それが疑問だ」 『ハムレット』、 もう一万回は観たな。] [まさか。 もしかして……あんたら、 俺が見えんのか? 見えてんなら…… すげえな。これ、奇跡か? こんなにたくさんの人間に 俺が見えるなんて。 俺は灰色の男と呼ばれてる。 通称グレイ。お見知りおきを。 こうやって人間としゃべんのは 150年?いや、200年ぶりだ。 そうだ、あんたらに頼みがある。 長い間この日を待ってたんだ。 どうしてもやり 遂げてえことがある。] 誰もが知ってるあのひとの 誰も知るはずのない 秘密の話 芝居に仕立てたのさ 観てくれよ 今夜限りの特別なショーだ さあ 幕あけよう! [1854年9月。ロンドン、 ドルーリー・レーン劇場。 新作の初日だ!] [すばらしかった。 きっと大ヒットね。] [それは間違いない。 あの灰色の男が 客席にいたそうだ。] [ロンドン一の霊能者が 大騒ぎしてた、 灰色の男を見たって。] [あのシアター・ゴースト?] [そう、彼が初日に現れると、 その芝居は大当たりするって 伝説があるの。]