彩られた思い出は その先に続く選ばなかった 未来さえも 美しく 名残惜しいものにしてしまうけれど ないものねだり 選ばなかったからそう 見えることもわかってんだ わけもなく目が覚めた深夜二時 風を待つ雨はシトシトと降り続く 「そうか」 とため息交じりにつぶやく 半透明な意識の中 鮮明な夢が残すタラればの幻影 ただの寄り道だったと 腹に落としたつもりでいても 揺さぶられた 澱(おり)がゆらゆらと 浮き上がり 少しばかりの後悔を引っ張り出す 彩られた思い出は その先に続く選ばなかった 未来さえも 美しく 名残惜しいものにしてしまうけれど ないものねだり 選ばなかったからそう 見えることもわかってんだ 雨音に溶けていく回想と想像 ただここにある日常へと流れていく 降り続いた雨は明け方にあがり 風立った街を平凡と朝焼けに染める うなだれた自分の亡霊を 追い出すように窓を開け 大きなあくびをひとつ あの日欲しがったものは ここにないけど まあこんな何でもない日々も 悪ないよなって 雨上がりの透明な空気を深く 吸い込む 輪郭すらない期待をまとって はねた髪を右手でおさえ今日を 始める
