透明のポットに注いだ 沸騰したお湯は 瞬く間に茶色く染まった 窓から差し込む光は少なく 曇りだと知る 視線は君を越えて 窓の空洞に うつろに 遅れる相槌に気づかない君は わたしを知らない 彼と過ごしたあの部屋を思い出す 彼の好きだったワインに 今もだらしなく縋っている こんな幸せが欲しかったはずなのに 後ろ髪を引かれる思いはどこへ 連れていくの 平穏な体温と愛だけをずっと 求めていたはずなのにな 記憶のなかに沈んだら 白日の夢を現実だと思えるかな あの部屋で初めて触れた匂いなら 洗濯をするたびに思い出すのに こんな幸せが欲しかったはずなのに 後ろ髪を引かれる思いはどこへ 連れていくの 平穏な体温と愛だけをずっと 求めていたはずなのにな