ここにはぼくの家族がいて ストーブのやかんが音を立て 台所から醤油の焦げる匂い ゆりかごの中からそれを見てる ぼくが泣き出すと母が来て 柔らかな乳を押し当てる 玄関の戸を引く音がして 姉たちは父を迎えに行く これはぼくの歌であり 同時に君の歌でもある 覚えてないだろうけど 本当のことだよ 家族の中で一人だけ ぼくと喋れる人がいる その人はぼくを笑わせるけど 皆んなにはそれが聞こえない ぼくはその人の顔を見る その人もぼくを見つめ返す 皆んなはぼくがあらぬ方を じっと見てると思ってる これはぼくの歌であり 同時に君の歌でもある ぼくも君と同じように 何かが見えていた 君がことばを覚えたとき 君はぼくを忘れるだろう だからそのときまで たくさん話をしよう ここにはぼくの家族がいて ストーブのやかんが音を立て 台所から醤油の焦げる匂い ゆりかごの中からそれを見てる ゆりかごの中からそれを見てる