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Logos

Track byfhana

302
5
  • 2022.04.27
  • 6:01
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歌詞

フィクションの話をしよう。 これはある街の暮らし。 この街の生活者は朝目を覚ますと 自室で入念に手を洗い、 部屋中を消毒してから、 宇宙服のような防護服に身を固めて 部屋を出る。 家族もまたそれぞれの 個室から出てきて フェイスシールド越しに挨拶をし、 テイクアウトした朝食を 防護服の中に滑り込ませて頬張り、 コーヒーをストローで飲み込む。 さながら朝の食卓は 宇宙ステーションの コックピットのよう。 通勤や通学も防護服を身に纏う。 かつては社会的ディスタンスを 保つ努力をしていたけれど、 結局バスや電車は人でいっぱいで、 ビニールをかぶってればいいよね とか言って あまり気にしなくなった。 マスクが義務付けられていた頃は 友達の顔を忘れてしまった。 隠れて見えていない部分は 想像で補うのだけど、実際以上に 整った造形を当てはめてしまって、 マスクを取ると誰?なんて 思ってしまったりして。 それもフルフェイスシールドを みんなが着用するように なってからはなくなった。 学校では、1日に何度も 防護服を取り替える。 めんどくさいから毎日オンラインで いいのにって思うけれど、 「格差」が出るから時々 行かなきゃいけないんだとか。 楽になったのは毎日の服装に 気を使わなくなったこと。 とびきりのオシャレをしたって 防護服の下では何もわからない。 オシャレはもっぱら自室からの インスタグラムが主戦場で、 最近ではVRを使わず生地の 素材感を活かすのが流行りだとか。 フィジカルな接触をする スポーツは、 ほとんどeスポーツに 取って替わられた。 それで夜になると、 宇宙船の乗組員たちは、 おやすみと言って別れ、 それぞれの個室で ようやく防護服を脱ぎ捨てる。 家族が寄り添って 眠りにつくことはもうない。 それがこの世界の「生活様式」。 ◆ そうやって僕らはお互いに 触れ合う行為を失ってしまった。 すべての対話はオンラインでの 画面越しか、 ビニールシート越しになった。 コミニュケーションが 鬱陶しくなったと感じる人も多い。 みんな怒りっぽく なったような気がする。 一体いつからこんなにも人同士が 隔たれてしまったんだろう? ウィルスが蔓延してから? 人々がパニックに駆られて、 スーパーマーケットの棚が 空っぽになってから? いろいろな防護策が 法律で定められてから? いや、もっと前から僕らは 離れ離れだったような気がする。 ウィルスが広まる前から ネットの中で生きているような 人もいたし、 発声せずに呟き続ける人々が 山ほどいた。 武器と武器を持って争い続けたのは 歴史が教えてくれる。 思想や信条が僕らを 隔ててしまうことは日常的だ。 Ismが、それぞれの正義を 強固にして、何百年も構造的に 人を階層に押し込んだ ことだってあった。 それは今だって時々 マグマのように噴出する。 いや、ひょっとしたら もっとずっと前に…。 僕らがlogos(言葉)を 持ってしまってからずっと、 僕らはお互い隔たれて しまったのかもしれない。 ◆ でも、僕らは確かに 感じることができる。 やけに濃い夕日の あまりの美しさを。 静けさの中に浮かぶ月の幽玄さを。 お互いを求め繋がっていたいと思う 希望を。 誰かを慈しみ、救いたいと願う 勇気を。 あなたをただ愛おしいと想うこの Pathosを。 決して忘れることなく、 焦がれ続け、 日々を過ごしている。 ◆ これはあくまでフィクションの話。 どこかの並行世界の日常。 それともいつか未来に訪れる 縦列世界の姿かもしれない。 人が言葉を持つ限り、 消滅することのない、pathos。 また今日も、 悲しくない話をしよう。

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